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瞑想4カ月で7割の人が悟りの領域に!?TransTech Conferenceから

コラム
2019.1.4

恐れが少なく「どんなことがあっても自分は大丈夫だ」という基本的幸福感(fundamental well being)を保つということは、どういう状態なのだろうか。米ソフィア大学のJeffery A. Martin教授が、悟っている人、基本的幸福感を持っている人を2500人以上調査した結果、前回の記事に書いたように、悟り(心理学用語では「継続的非記号経験=PNSE」)に達した人には共通の体験があり、悟りには一定の継続的な段階があることが分かった。同教授はまた、PNSEに入る前と入った後の変化を調べるために、オンラインの瞑想プログラムを開発。同プログラム受講者の7割が4カ月でPNSEに入ることができたという調査結果を発表している。悟りはごく少数の修行者だけが到達することのできる境地と思われがちだが、同教授は「自分に合った瞑想方法とさえ出会うことができれば、ほとんどの人が短期間にPNSEに入ることができる」と語っている。

 

▼「継続的幸福感」が悟りへの入り口

前回の記事を読んでいない人にとっては、ほとんどの人が悟りに入れるという話は、にわかに信じがたいことだろう。一般的な日本人がイメージする「悟り」とは、我欲の一切ない仙人のような人も心の状態なのかもしれない。しかし前回の記事にあるように、仙人のような境地はPNSE(「悟り」を意味する心理学用語「継続的非記号経験」)の4段階目以降。最初の3段階は、いわゆる人間らしさが残っている段階だ。

ではPNSEに入っている人と、入っていない人では何が違うのか。根本的に違うのが、心の奥底にある感覚。PNSEに入っていない人の心の根底には「欠乏感」「恐れ」があり、入っている人には「常に満たされた感覚」「根本的幸福感」があるのだ、と同教授は指摘する。

ここで重要なのが「常に」という表現。人生は山あり谷あり。でもたとえ悲しい出来事が起ころうとも、心の奥底には静かな幸福感が流れていて、他人や運命を責めることはない。そういう幸福感が「根本的幸福感」であり、そういった幸福感を常に持つには、雑念が少なく心が澄み渡っている状態でなければならない。PNSEに入った人に共通する体験として、「雑念が大幅に少なくなる」というものがあるが、雑念のない心静かな状態だからこそ、心の奥底にある幸福感を味わうことができるのだろう。

 

▼自分に合った瞑想法がキモ

さて本題に入ろう。7割の人が4カ月でPNSEに入れるオンライン瞑想プログラムとは、どのようなものなんだろう。名称はFinders Courseで、各宗教などで使われている祈りや瞑想方法など伝統的な手法から25の方法を選び、宗教色を排除して現代風にアレンジ。それを、一日一時間、4カ月継続するというものらしい。最初の6週間は、自分に合った瞑想方法を試す期間。同じ瞑想法を1週間ほど続けてみて、普段の心のありようが変化するかどうかを観察することで、自分に合った方法かどうかを試していく。普段の生活でもいつもより心が穏やかで幸福感を感じるのであれば、その瞑想法が自分に合っている証拠。自分に合った方法が見つかれば、残りの期間でその瞑想方法を続けていくのだという。

Finders Courseはこれまでに11回開催。総受講者は454人という。心理学の代表的なテスト手法を使ってPNSEに入っている人と同等の数値が出るかどうかを調べたところ、オンライン瞑想プログラムを受講したことでPNSEに達した人は、319人になった。約7割が「悟り」のプロセスに入ったわけだ。

幸福度は、代表的な心理学の感情検査「全体的な幸福度に関する調査票(AHI)」で計測したが、受講前の数値の平均が3.17だったのが、受講後には3.71に上昇。17%の変化を記録した。「統計的に意味がある数字かどうか。もちろん、非常に意味のあるレベルだ。心理学の研究者なら分かると思うが、4カ月のオンライン瞑想コースとしては、これは驚異的な変化だ。学会で紹介すると、多くの研究者が驚愕するほどだ」と話している。

また「寂しさ」はポジティブ心理学のPERMAで計測。結果は47%も減少している。情緒不安定性は、31%も減少している。

意外なのが、「感謝」の変化が少ないこと。受講前と後とでは7%しか数値に変化がない。「PNSEに入ると感謝の思いが強くなりそうに思いがちだが、実際の変化はそれほどでもない。瞑想が万能薬ではないことが分かる」としている。

 

▼筋トレも脳トレも短期間で成果を出すことが可能

僕自身、瞑想は数年前から継続的に実践してきているので、この研究結果は非常に興味深い。個人的な感想をいくつか書いてみたい。

まず4カ月で7割の人がPNSEに入ったことには驚いた。瞑想の成果を感じれるようになるまでに、少なくとも2、3年はかかると思っていた。

しかし考えてみれば、肉体改造でもパーソナルトレーナーをつけてフィットネスクラブに毎日通えば、3カ月ほどでかなりの効果がでる。瞑想はいわば、脳のトレーニング。脳のトレーニングも、パーソナルトレーナーをつけることで、それなりの効果が出るということなのかもしれない。

また自分に合った瞑想方法を見つけることの大事さには、完全に同意。僕自身は、スローなヨガを通じた瞑想が一番簡単だし、最近ではサウナの温冷浴を3セットしたあとの休憩での瞑想が、一番深く入れるように思う。人によってはジョギングのあとの瞑想や、水泳、サーフィン中の瞑想なども効果があると思う。友人の中には瞑想の習慣がないにも関わらず、明らかにPNSEに入ってる人が何人もいる。心を静かにする習慣さえあれば、多くの人が「根本的幸福」の状態に達することができるのだと思う。

2500人の悟り人の聞き取り調査で、PNSEに入ったきっかけで最も多いのが、病気や事故、自殺未遂など、劇的な出来事。Martin教授は「自分のことを徹底的に客観視することでPNSEに入ったのではないか」という。一方で、瞑想などの自助努力でPNSEに入った人は、ごくわずか。つまり一部の宗教家を除いて、これまで悟りは偶発的なもので、悟りたくてもなかなか悟れないものだった。

ところがFinders Courseで、自分に合った瞑想方法を数カ月実践すればほとんどの人がPNSEには入れることが分かった。誰でも望めば、「欠乏の感覚」から「満たされた感覚」へと移行できることが証明されたわけだ。過度の経済競争、軍事的脅威など、現代の問題の多くは「欠乏の感覚」に端を発していると言ってもいいだろう。もし多くの人が「満たされた感覚」に移行すれば、社会問題のほとんどは自然に解決していくかもしれない。

Google社内でマインドフルネスを流行らせたChade Meng-Tan氏は、満たされた感覚の人を100万人増やしたいと考えている。TransTech Conferenceの主催者は10億人作ろうとしている。

しかし社会が大きく変化するには、4カ月の瞑想よりもさらに簡単な手法が求められている。そうでなければ悟り人10億人の時代など、まだまだ先の話だ。

次の記事では、もっと多くの人が簡単にPNSEに入れる技術の開発の最前線をレポートしたい。

 

 

 

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Editor's Profile

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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