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ウエアラブル新時代は音声ARから

コラム
2020.3.19

数年前に某新聞社主催のウエアラブル関連の大規模カンファレンスの司会をさせてもらったことがある。当時はGoogleのスマートグラスGoogle Glassが発表されたばかりで、ウエアラブルコンピューターに世間の耳目があつまり、大盛況のカンファレンスになった。

ただ司会をしながら、ウエアラブル機器の開発者たちの話を聞いていて、ものすごい違和感を感じていた。それらの機器はアイデアとしては斬新でおもしろいのだが、完成度が中途半端で、どれも到底普及するとは思えなかったからだ。

メディアは一部開発者たちを「天才」と持ち上げた。僕は、担いだ神輿をいとも簡単に投げ捨てるのがメディアの常であることを知っているので、持ち上げられている人たちのことをかわいそうにさえ思ったほどだった。

今は、ウエアラブルのことを記事に書いてもだれも注目しない。恐らくこのコラムもアクセス数がほとんど伸びないことだろうと思う。

それでもこの時点で、この記事を書いておきたいと思うのは、明らかに今、時代が動こうとしているからだ。

最近、いろいろウエアラブル機器を調べたいるのだが、1つおもしろいと思ったデバイスがある。

Livio AIという補聴器ななのだが、通話ができたり、リモコンになったりする。テレビや音楽プレーヤーなどの音をストリーミング転送し、イヤホンの役割をする。

各種センサーが搭載されているので活動量計にもなり、転倒検出通知も可能。近く心拍計測もできるようになるという。

このほか文字起こし、音声翻訳などもできるし、AIアシスタントも載っている。

高齢者の能力を補強するだけでなく、拡張もできるわけだ。

これは「拡張現実」の一種だと思う。

ウエアラブルコンピューターがブームのときに、盛んに使われた言葉に「VR(仮想現実)」と「AR拡張現実)」というものがある。

よく似た言葉なのだが、VRのほうは仮装空間を体験するもので、ARのほうは現実世界の中に仮想の物体や情報を貼り付けるもの。貼り付けるといっても、メガネにつけられた超小型スクリーンに物体や情報が表示され、リアルな空間に貼り付けられたように見えるようになっている。

当時、ARはこのような視覚面で、リアル空間の中でのユーザーをサポートする技術として語られていた。

しかしこのLivioAIは、音声を使ってリアル空間の中で高齢者をサポートする技術である。いわば音声ARなのだと思う。

ビジュアルデータよりも音声データのほうがデータ容量が少ないので扱いやすい。ウエアラブル時代は、当初考えられていたビジュアルのARではなく、音声のARが先にくるのではないかと思うようになった。

事実、Amazonは既に、動き出している。

Echo Loopというスマートリングを米国内限定で一部招待客相手に予約発売を開始した。

AIスピーカーAmazon Echoに搭載されているAIアシスタントのAlexaが搭載されている指輪なので、AIスピーカーにできることは、ほぼなんでもできるもよう。

指輪をタップするだけで、電話をかけることができる。スーパーで買い物中に、A買い物リストに何が載っているのかをAlexaに質問できる。

Alexaなので、百科事典のように何でも知ってるし、質問に答えてくれる。自宅の家電機器をAlexaでコントロールできるように設定しているのであれば、帰宅途中に「リビングの電気をつけて」と指輪に向かって言えば、自宅に到着する前に照明をつけておくことが可能らしい。

Appleも負けてはいない。Appleのイヤホンの最新版AirPos Proには、外の音を聞けるトランスペアレントモードと外の音をシャットアウトするノイズキャンセリングモードがあり、トランスペアレントモードにしていると、イヤホンをつけているのを忘れるぐらいだと言う。もちろんAIアシスタントのsiriが搭載されているので、ある友人は「これがまさに拡張現実のウエアラブルだ」と感想を述べてくれた。

AirPods Proは大変な人気で、今注文すると配達されるのは1ヶ月後ぐらい。オンラインショップでは、プレミア価格で販売されていたりする。

Airpodsの出荷台数は、2020年には前年比50%増の9000万台に到達するという予測もある。

今後Appleは、AirPods Proに体温センサー、心拍センサーなどを搭載するという噂もあり、ますます高性能のイヤホンに進化しようとしているようだ。

「今年こそウエアラブル元年」、「今年こそVR、AR元年」と言われ続けて久しい。実は、時代変化の波は、静かにやってきているのかもしれない。

 

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Editor's Profile

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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